ミステリー・ツーリング
目的地は明かさずに出発するというミステリー・ツアーなるものが、密かに人気を博していると聞いた。
聞いただけで、何とも面白そうではないか。
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さて、今日は、SMRのトレ班2班(トレーニング2班)の藤田さんにお願いして、ツーリングに連れて行ってもらうことになった。
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私はツーリング班の2班。
SMRでは、トレーニング班とツーリング班に分かれ、それぞれに1班、2班がある。
順番は、トレ1班、トレ2班、ツーリング1班、ツーリング2班となる。
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ツーリング2班の一員からすると、トレ2班は化け物である。
ちなみにトレ1班は、大会の上位入賞者の実力者で、ノンプロ級である。
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そんな訳で、「今日はツーリングでお願いします。」と念を押しておいた。
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「了解しました。では、100キロのツーリングを楽しみましょう。朝7時に行きます。」
とのメールが入った。
行先は明かされていないミステリー・ツーリングである。
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”楽しい” という文字を信じ、ウキウキして7時を待った。
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「今日は、約100キロ、平均速度20キロで行けば、5時間で100キロですから、12時に帰宅予定で行きましょう。」ということで、約束通り、7時にスタート。
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普通、リバティーでは平均速度28~29キロで走っているので、距離は100キロと長いが、平均速度20キロであれば、楽しみながらいけそうだ。
そう思った。
しかし、この考えが、どんなに甘かったか、その後に、どんな試練が待ち構えているのか、この時は知る由もなかった。
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まずは、いつもの牧の原の山を登った。
歓談しながら、ポカポカ陽気を全身に浴び、気持ち良い、まさにツーリング。
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その山頂で、藤田さんから、ミステリー・ツーリングの内容が告げられた。
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「あの山と、あの山と、あの山を登って降りましょう。ゆっくり行きますから大丈夫です。」
「・・・」
話が違うぞ!と思ったものの、ま~~ゆっくりなら行けるやろ~~、真剣にそう思った。
ミステリー・ツーリングの内容は4つの山のツーリングであった。
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いざ、スタート!
山頂に近づくと、チンタラ登っている私に対し、
「山頂まで、あと100メートル。ラスト頑張りましょう!」
と言って、藤田さんがペースを上げる。
あと100Mか、ヨッシャ~~!
藤田さんの言葉を鵜呑みにし、僅かに残ったエネルギー、気力を使い、頑張る私。
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実際には500Mくらいあった。
当然、筋力、気力はもたない。
ラスト300Mくらいを残し、心が折れた。
「藤田さ~~~ん、マジっすか?」
「へへへへ・・・・」
3つ目の山を降り、ラスト1つの山を残し、時計を見ると2時間40分経過。
ここで、セブンイレブン休憩。
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自転車から降りると、さすがに私の大腿四頭筋は悲鳴を上げ始めている。
乳酸が、かなり溜まっているのが分かる。
10をMAXとすると7くらい溜まっているだろうか、真っ直ぐ歩くことができない。
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エネルギー補給と水分補給。
最後の山へ向かう途中、以前から気になっていた山が目に入った。
”茶” の文字がある山である。
リバティーでジョギングをしている時も見える山であり、ず~~っと気になっていた。
そこから見たら、そんなに高く見えなかったので、「あの山の茶の文字の所まで行きたい。」と藤田さんに提案してみたら、あの山は粟ヶ岳という山で、自転車で良く登る山だと言う。
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という事で、予定を変更して、粟ヶ岳に寄り道することになった。
しかし、しかし、これが、とんでもない山であった。
麓に行くと、山頂まで5キロという表示板があった。
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ま・ま・まじ?5キロもあんの?
この5キロの傾斜が、私には半端なかった。
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藤田さんの言った通り、多くの人がツーリングを楽しん?でいた。
山頂には、自転車置き場がある程だ。
山頂は絶景であった。
勝手に、茶の文字だけに、茶畑で作った文字だとばかり思っていたら、何と ”木”
であった。冷静に考えてみれば当たり前であるが・・・・・。
これがその文字の木である。
さて、この山で、私の足は終わってしまったようだ。
足に全く力が入らない。
パワーが出ない。
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心配した藤田さんが、
「最後の山は、一番きつくて一番長い山のコースです。行けますか?止めますか?」
「・・・・・・・・ゆっくりなら、行けるかもしれませんが、もう私の足の筋肉はパンパンです。」と正直に告げた。
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そう言い終わると同時に、藤田さんは最後の山に向かって始動していた。
その山の1/3程まで登った頃、私の足が止まった。
正確には、メーターで時速6キロほどのスピードでしか走れなくなってしまった。
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「大丈夫ですか?」
「筋肉のエネルギー95%が消費されたって感じです。」
「これからがきつくなるし、まだあと15キロ以上あるので、無理ですね。引き返しましょう。」
「・・・ちなみに藤田さんの筋肉はどうですか?」
「う~~ん、正直、まだフレッシュな状態です。」という返事。
まだ、全く筋肉痛がないということだ。
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トレ班とツーリング班の違いを見せつけられた瞬間であった。
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結局4.3個の山越えで終わった。
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「あとは平地を選んで、ゆっくり帰りましょう。」
「すみません。」
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悔しさ半分、ホッとした気持ち半分。
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しばらく見知らぬ道を、藤田さんの背中を見ながら、ゆっくりとツーリング。
平地なら、残った力で何とかいけるだろう、と言うより帰る以外の選択肢はないのだ。
「もうすぐ大井川に着きます。」と藤田さん。
またもや、藤田さんの言葉を鵜呑みにし、最後の力を振り絞って頑張ってこぐ私。
しばらくして、信号停車すると、前方に掛川城が目に入った。
GARMINの時計を見ると、丁度100キロ経過を示していた。
「藤田さ~~ん、もう100キロ走っているし、掛川城が見えますけど・・・・」
「へへへへ・・・、ここまで来たら、もう帰ったと同じですよ。私の中では、掛川に来ると、ようやく帰って来たって感覚ですよ。」
「・・・・・・・・・・・マジっすか。」
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トレ班の頭の中は、ツーリング班とは違うみたいだ。
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結局、それから、お約束とばかり、一つの山を越え、正確には、一つプラス小山一つ、午後2時17分の帰宅となった。
約5.5の山越え、総時間7時間17分、走行距離129キロ。
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これだけ長時間、連続して運動したのは、初めてである。
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いい経験が出来ました。
もう暫く、自転車も山も見たくありません。